飛鳥部勝則著・初期長篇『N・Aの扉』。
新規加筆あり“新装版”として復刊ドットコムより発売決定。

書泉・芳林堂書店はこの度、「芳林堂書店と、10冊 第2シーズン」の第5弾といたしまして、株式会社復刊ドットコムとの共同取組にて、1999年発表の長篇小説『N・Aの扉[新装版]』(著者:飛鳥部勝則)を販売いたします。

N・Aの扉[新装版]

飛鳥部勝則

僕が幽霊の話をしたら信じてくれますか? 幽霊は幽霊でも「本格推理の幽霊」なんです。一種の怪談のような、本格推理小説が幽霊になって出てきたような…そんな話なんです。書き下ろし長編。

『N・Aの扉』とは、2025年1月に文庫化されて大きな話題を呼んでいる『堕天使拷問刑』の著者、飛鳥部勝則さんが1999年に発表した第3作目の長篇小説です。本格ミステリーでありながら、幻想小説であり、著者の私小説的な面も持ち合わせる、作家の個性を最もディープに堪能できる作品です。
発表から25年間、書籍は古本市場で高騰し入手困難。未文庫化・未電子書籍化のため作品に触れることが難しい状態でした。株式会社書泉と株式会社復刊ドットコムは、これまで『影の獄にて』『夢野久作の日記[新装版]』の2作を共同取組として復刻してまいりました。今回は新たなチャレンジとして、飛鳥部勝則さんの全面的なご協力のもと、「N・Aの扉」という作品を作り直します。

今回の復刻の目玉は、飛鳥部勝則さんによる新規書き下ろしパートの追加です。「本格推理の幽霊」を巡る本編に引き続き、巻末には「別館入口『変格推理の幽霊』」パートが加わります。時を経て辿り着いた、作家最新の答えに触れてください。
また、書泉・芳林堂書店にて限定で、飛鳥部勝則さん書き下ろし短篇(タイトル未定)収録の有償特典小冊子を同梱した限定版を同時発売致します。 数量限定のサイン本も用意致しますので併せてご検討下さい。

 それぞれに個性的な飛鳥部勝則さんの作品群の中でも、『N・Aの扉』は特に異彩を放つ作品です。現実と虚構が入り交じり、著者の推理小説への考えが多く盛り込まれているように見えつつも、あくまでフィクションとして構成されています。著者のことをもっと知りたい読者にとっては絶対に外せない作品であることは間違いありませんが、どのように消化するべきか、少なくとも一読しただけでは呑み込むことは難しいです。手元に置いてじっくりと味わい、読み返して頂くために復刊して頂きます。書き下ろしパートで私たちは漸く出口に辿りつけるのか、さらに迷子になってしまうのか。ご一緒に別館へと足を進めましょう。

 第三長編『N・Aの扉』は、ミステリーやホラーなどのいかなるジャンルにも属さない、離れ小島のように特異な作品であり、それ故に復刊の喜びもひとしおです。この長編は飛鳥部のすべての小説の原点であり、同時にすべての小説のあとがきでもあります。復刊にご尽力いただいた書店様や出版社様、関係者の皆様、何よりご支持いただける読者の皆様に、心よりの感謝を申し上げます。

  著者のデビュー翌年に書かれた長編第3作にして、その後の一筋縄では行かない作風を早くも覗かせる異色作。
語り手による「幽霊小説(ゴースト・ストーリー)」についての考察から幕を開ける『N・Aの扉』は、それ自体もまた一編の幽霊小説となっています。ただし「幽霊についての小説」ではなく、「それ自体が幽霊である小説」として。
主人公の作家・浜崎が学生時代に執筆した習作への言及がありますが、作中作としてそのまま引用されないため読者は想像するしかない幽霊のようなそれらの習作が、友人による評論という形でのみ触れられるという構成は、J・L・ボルヘスやスタニスワフ・レムによる「架空の書物への書評」を思わせるところもあり、「お決まりのミステリ」からの脱却を目指した著者の意欲が窺われます。
また浜崎が幽霊のように謎めいた少女と出会って繰り広げるミステリ談義も興味深く、小説の形を借りてミステリ評論を内包したメタミステリとしての側面もあります。
そうしたさまざまな読み方を可能にする要素が盛り込まれていることから、一般的な意味でのミステリとは呼べないように見せつつも破綻させることなく、まるでこの小説すべてが幽霊であったかのような不思議な読後感を残していく手腕の鮮やかさが再評価されるべき作品です。四半世紀を経て新装復刊されるこの機会にぜひお手に取ってください。

商品情報

タイトル

N・Aの扉[新装版]

著者

飛鳥部勝則

出版社

復刊ドットコム

判型

四六判・上製

ページ数

280P程度

販売価格(税込)

通常版:3,300円
有償特典版:3,910円(有償特典 610円)

発売日

2025/05/20

有償特典情報

特典:飛鳥部勝則書下ろし短篇
「タイトル未定」を収録した有償特典版小冊子

備考

*本書は、『N・Aの扉』(飛鳥部勝則・著 新潟日報事業社・刊 1999年11月)を底本とし、内容の一部に修正、増補のうえ、新たな装丁にて刊行するものです。

※サイン本及び有償特典の数には限りがございます。
定数に達し次第終了となること、ご理解のほどよろしくお願いいたします。

3月10日 12時より予約受付開始!

『書泉と、10冊』『芳林堂書店と、10冊』について

昨今、さまざまなネットサービスで過去に出版され、探しても見つからない数々の本が法外な値段で取引されています。
「欲しい人が払える分の値段を払う」ということは一見、今の世の中の「当たり前」に見えますが、
私たちは「そうではない」と考えます。


ファンの方が熱望するあの名作、私たちも是非お勧めしたいあの名著を
「適切な価格」でお届けすることに私たちは挑戦していきます。

そして、それは私たち“本屋”だけでは実現できません。
著者の方々、出版社のみなさま、ファンのみなさま、など
ご縁のある方と協力しながら、少しずつでもこの挑戦をカタチにしていけると信じています。

この企画を「書泉と、10冊」という名前にしました。
「書泉と、ご縁ある方で世に送り出す10冊」という願いを込めての企画タイトルです。
まずは、10冊。この企画で改めておススメしたい本を2023年8月よりお届けしています。