倉野憲比古さんは2008年、『スノウブラインド』(文藝春秋)によって怪奇・ミステリー界隈で鮮烈なデビューを果たされました。
コンテストなどのルートではなく、精神科医春日武彦先生から編集者への原稿紹介という、今は珍しい方法で作家となった倉野さんは、その経緯よりも奇怪な独特の魅力に満ちた作風で読者を魅了し、新刊流通での作品入手が困難となった現在では、古書市場で著作が高価で取引されてしまうほどの支持を持ち続けていらっしゃいます。
寡作であり、現在までに3作のみの長編を発表している倉野さんですが、来年、2026年3月には待望の新刊『ナッハツェーラーの城』(中央公論新社)の刊行が予告されています。この機会に、読者の皆様には品切れ状態となっておりましたデビュー作『スノウブラインド』・幻の名作『墓地裏の家』をお手に取っていただきたいと希望をし、文藝春秋様にこれを実現していただきます。
復刊に際し、倉野憲比古さんと共に変格ミステリ作家クラブを運営されている、作家の竹本健治さんと、倉野作品のファンであったことから友好を深められ、長らく応援を続けていらっしゃる、怪奇幻想ライターの朝宮運河さんに推薦コメントを頂戴いたしました。
『この人を見よ(エッケ・ホモ)。――自らを変格作家と眼も眩まんばかりに見定め、今という時代において変格ミステリのあり方・存在意義・切り結びを問い続ける物書きがここにも一人。』
――竹本健治
『この出口のなき探偵小説の中で、あなたは悪魔の哄笑を耳にするだろう。それはおぞましい事件を引き起こした真犯人の声か。はたまた乱歩や久作、虫太郎に魂を捧げた変格探偵作家・倉野憲比古の声なのか。現代ミステリを闇で塗りつぶす異形の物語が、ついに甦る。』
――朝宮運河
今回の復刊に際し、限定数のサイン本をご用意いたします。また、未発表の短編を有償特典として小冊子化いたしました。
文藝春秋の担当者様より、どうしても復刊したい本があるとご紹介を頂いてから、もう一年以上が経ちました。
私も読んですぐ虜になった倉野先生の作品世界を、弊社から皆様にプレゼンするとしたらいつがベストなのか。
ずっと考え続けた末のこのタイミングです。
2026年、新刊の発売によってこれからの「変格」を背負って立つ作家・倉野憲比古さんに、ぜひ入門してください!
時代は変わったなあ……!
刊行当時はクソミソに叩かれるか黙殺されるか、どちらかだった私の怪奇探偵小説、近頃ちらほらと再評価の動きが出てきたなとは思っていたけれど、まさか復刊されるなんて! もしかすると、平成の世には早すぎた書だったのでしょうか……。
この書を読んで、雪盲の虜になるか、はたまた吸血神の餌食になるか……。さあ一緒に〈新変格〉の旗を掲げるぞ!
あまりにステロタイプな〈吹雪の山荘〉ものが中盤から徐々に歪んでいく。トリックが超常現象へと変貌し、ついに衝撃的なフィナーレへ。ミステリ読みとしては否定せずにいられない、だが著者と同じ心理学を学んだ身だからなのか、「これぞあり得べきラストなのだ」との思いも。それが20年近く前の『スノウブラインド』草稿初読の感想でした。
著者のホラーへの偏愛と本格ミステリへの近親憎悪が生み出した、〈新変格ミステリ〉の世界をご堪能あれ。
昨今、さまざまなネットサービスで過去に出版され、探しても見つからない数々の本が法外な値段で取引されています。
「欲しい人が払える分の値段を払う」ということは一見、今の世の中の「当たり前」に見えますが、
私たちは「そうではない」と考えます。
ファンの方が熱望するあの名作、私たちも是非お勧めしたいあの名著を
「適切な価格」でお届けすることに私たちは挑戦していきます。
そして、それは私たち“本屋”だけでは実現できません。
著者の方々、出版社のみなさま、ファンのみなさま、など
ご縁のある方と協力しながら、少しずつでもこの挑戦をカタチにしていけると信じています。
この企画を「書泉と、10冊」という名前にしました。
「書泉と、ご縁ある方で世に送り出す10冊」という願いを込めての企画タイトルです。
まずは、10冊。この企画で改めておススメしたい本を2023年8月よりお届けしています。