「中世への旅」シリーズの大ヒットから始まった、「書泉と、10冊」。この企画は、過去に出版された書籍で既に在庫がなく手に入りにくい名作を、株式会社書泉と出版社のみなさま、著者のみなさまに協力いただき重版・復刊してお届けしていくものです。その「書泉と、10冊 第2シーズン」の第4弾として、東京創元社刊 『ルータ王国の危機』(エドガー・ライス・バローズ:著/厚木淳:訳)を復刊致します。
複雑でストレスの多い現代社会、頭をカラッポに爽快な冒険小説を読みませんか? 現代人はクラシカルな冒険小説を欲している!それならバローズだ!と、いうわけで企画いたしました。例えば宮崎駿の「ルパン三世カリオストロの城」や「天空の城ラピュタ」のようなノスタルジックな冒険の物語。埋もれてしまった、こうしたジャンルの小説を読者に再発見してほしいと思いました。
欧州の古い王国ルータを観光で訪れたアメリカ人青年が、この国の宮廷で進行中の陰謀事件に巻き込まれてしまいます。王国の実権を握る摂政公は王位を狙うが、この青年は国王に瓜二つだったのだ!波乱万丈の危機と、恋がおりなす、華麗な宮廷絵巻!作者は、「ターザン」の原作者で知られるSF冒険作家E・R・バローズ!読んで例えばジブリ映画や東京ディズニーシーのBGSのような、クラシカルなロマンスにあふれた作品です。今回は当企画限定の特典として、加藤直之さんによるイラストを使用したポストカードをお付けします。この機会に是非ともお買い求めください!
なんと『ルータ王国の危機』が選ばれるとは! バローズは日本でも四半世紀にわたって、いまからは想像できない規模で人気を博しつづけた作家ですが、数ある邦訳の中でも本書は、思い出されにくいことでは一、二を争うタイトルではないかと思っていたのでした。ですが――発表当時の1910年代という時代性を反映させた、この架空の小国での陰謀劇は、章が変わるごとに思わぬ方向へ状況が変わっていき、まさに「冒険絵巻」と呼ばれるにふさわしい一作だと認識しました。本書を再発見していただき、感謝の念に堪えません。一人でも多くの読者にとって、無上の読書体験となりますように。
田中芳樹先生が以前提唱されたルリタニア・テーマ(異世界ではなく、近現代のヨーロッパの一角に架空の小国を設定し、舞台とする小説。ルリタニア・テーマという名前は、A.ホープの小説『ゼンダ城の虜』に登場する架空の国ルリタニア王国に由来)本書はいうまでもなくホープの『ゼンダ城の虜』にインスパイアされて書かれたエンタメ作家バローズのエピゴーネンです。しかし、ホープのいわば後継作品としては格別の出来で、冒険の果てにはオーストリア軍との派手な戦闘があったり、古き良き冒険小説をたっぷり楽しめます。余談ですが本書の第一部が発表されたのが1914年。ということはサラエヴォ事件の年、第一次世界大戦のはじまりの年でもあったのです。後世からあらためて考えるとバローズの筆には当時の空気感と同時代性が感じられると思います。個人的には歴史的な一作と思います。
昨今、さまざまなネットサービスで過去に出版され、探しても見つからない数々の本が法外な値段で取引されています。「欲しい人が払える分の値段を払う」ということは一見、今の世の中の「当たり前」に見えますが、私たちは「そうではない」と考えます。ファンの方が熱望するあの名作、私たちも是非お勧めしたいあの名著を「適切な価格」でお届けすることに私たちは挑戦していきます。
そして、それは私たち“本屋”だけでは実現できません。著者の方々、出版社のみなさま、ファンのみなさま、などご縁のある方と協力しながら、少しずつでもこの挑戦をカタチにしていけると信じています。
この企画を「書泉と、10冊」という名前にしました。「書泉と、ご縁ある方で世に送り出す10冊」という願いを込めての企画タイトルです。まずは、10冊。この企画で改めておススメしたい本を2023年8月よりお届けしています。